妊娠初期のつわりは、本当に個人差が大きいものです。
何も食べられないほど重い方もいれば、少しは食べられるけれど、食べた後にムカムカした気持ち悪さがずっと続いてつらい…という方も多いのではないでしょうか。
特に「なんとか口にできるのに、スッキリしない」「空腹だと気持ち悪いから食べているけれど、結局また気持ち悪くなる」といった悩みは、まさにつわり特有のつらさです。
この記事では、そんな「食べられるけど気持ち悪い」状態に悩む妊婦さんが、少しでも快適に過ごせるように。
日常の中で取り入れやすい工夫や体にやさしい対処法をやわらかい言葉でご紹介します。
無理をせず、自分のペースでつわりの時期を乗り越えるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「食べづわり」ってなに?食べられるのに気持ち悪い理由
いわゆる「食べづわり」と呼ばれるこの症状は、つわりの中でも比較的多くの妊婦さんが経験するタイプです。
お腹がすくと強い吐き気を感じてしまい、「なにかを食べれば落ち着くかも」と食べてみると、一時的には少し楽になるものの。
そのあとまたすぐにムカムカとした気持ち悪さがぶり返す…そんなサイクルが繰り返されるのが特徴です。
このような症状の原因としては、妊娠にともなうホルモンバランスの変化が大きく影響していると考えられています。
特にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの増加が、胃腸の働きを乱したり、気持ち悪さを引き起こしたりすると言われています。
また、妊娠初期には血糖値が下がりやすくなるため、空腹時に気分が悪くなりやすくなる傾向もあります。
さらに、においに対して敏感になる「嗅覚過敏」もこの時期の妊婦さんにはよくある変化です。
これが食事のにおいや周囲の匂いに反応して、さらに吐き気を強くしてしまうこともあるのです。
つまり、「食べづわり」は単なる気分の問題ではなく、体の変化やホルモン、血糖値、嗅覚といったさまざまな要素が複雑に絡み合って起きている自然な現象なのです。
ちょこちょこ食べがカギ!胃にやさしい食事スタイル
つわり中の食事は「量より回数」が大切です。
1回の食事でたくさん食べようとすると、かえって胃に負担がかかってムカムカがひどくなることがあります。
そこでおすすめなのが、1日3食という枠にとらわれず、5~6回、あるいはそれ以上に分けて、ちょこちょこと小分けに食べる方法です。
たとえば、
- 朝起きたらすぐにクラッカーを1枚
- 午前中にバナナを半分
- お昼にはおにぎり1個と具なしのお味噌汁
- 午後はゼリーやヨーグルトを少し
また、「お腹がすいた」と感じる前に何かを口に入れておくこともポイントです。
空腹状態になると吐き気が強まることがあるため、少し先回りして補食することで気持ち悪さを防ぎやすくなります。
夜中や明け方に空腹で気持ち悪くなる方は、枕元に軽食を置いておくのもひとつの方法です。
食べやすさ重視!においが少ない食材を選ぼう
つわり中は嗅覚がとても敏感になり、普段は気にならなかったにおいでも気持ち悪くなることがあります。
特に温かい料理はにおいが立ちやすいため、食欲が減退したり吐き気を誘発したりしやすくなります。
そんなときは、できるだけにおいが控えめで、冷たくてサラッと食べられるものを選びましょう。
たとえば、
- 冷たいごはんに梅干しや塩昆布を添えたおにぎり
- 冷やしたフルーツ
- プレーンヨーグルト
- ゼリー
- クラッカー
また、冷製スープや冷やしうどんなども、比較的においが抑えられているためおすすめです。
温かいものが食べたいときは、しっかり湯気を飛ばしてから食べることでにおいを抑えることができます。
調理中のにおいがつらいときには、家族に作ってもらったり、あらかじめ作って冷蔵庫に保存しておいたものを食べるようにするのもよいでしょう。
水分補給は「飲めるとき」にマイペースで
つわり中は、水分補給もなかなかうまくいかないことが多いですよね。
「飲まなきゃ」と思うほど、かえって気持ち悪くなってしまったり、飲んだ直後に吐いてしまったりすることもあります。
だからこそ、無理に水分をとろうとせず、自分が「飲めそうかな」と感じたときに少しずつ補給するのがポイントです。
おすすめの方法は、氷をなめること。
氷なら口の中でゆっくり溶かすことができるので、水分補給がしやすくなります。
ストローを使ってちびちび飲むのも、量を調整しやすくて便利です。
また、炭酸水やフレーバー付きの水、麦茶など、自分が「これなら飲みやすい」と思えるものを見つけることも大切です。
味や冷たさを変えるだけで、飲みやすさがぐんと変わることもあります。
水分は一度にたくさん飲む必要はありません。
小さなペットボトルや水筒を常に近くに置いておき、気がついたときに少しずつ飲むようにしましょう。
また、ゼリー飲料やスープ、果物など食べ物から水分を補うという考え方も取り入れてみてください。
意外と知られていませんが、スイカやみかん、りんごなどの果物や、ゼリー、味噌汁なども立派な水分源です。
水分補給も「無理せず、自分のペースで」が大切です。
横になる姿勢も工夫してみよう
食後すぐにゴロンと横になると、胃酸が食道に逆流しやすくなり、逆流性食道炎のような不快感が出ることがあります。
これが原因で、せっかく食べた後なのに気持ち悪さがぶり返してしまうことも少なくありません。
そんなときは、体の角度を意識して、上体をやや起こした姿勢で過ごすのが効果的です。
たとえば、ソファにもたれかかって半分寝そべるような姿勢をとったり。
あとは、ベッドや布団の背中側にクッションを何枚か重ねて、頭と上半身を少し高くしておくと、胃の内容物が逆流しにくくなります。
30~45度くらいの角度が目安ですが、心地よく感じる高さを調整して、自分に合った姿勢を探してみましょう。
また、抱き枕や大きめのクッションを体に巻き込むように抱えることで、体の安定感が増し、心身ともにリラックスしやすくなります。
妊娠中の方に人気の「シムス体位(横向きで膝を少し曲げた姿勢)」もおすすめです。
お腹への圧迫を避けながら、呼吸がしやすく、安眠にもつながります。
さらに、食後すぐではなく、少し時間をおいてから横になるのもポイントです。
食事の後は、15~30分ほど座って過ごし、消化を助けてからゆっくり横になるようにすると、気持ち悪さを防ぎやすくなります。
つらいときは無理をせず、自分がリラックスできる体勢をいくつか試して、少しでも快適な時間をつくってみてくださいね。
我慢しすぎないで!頼れる人に相談を
つわりは体の不調だけでなく、気持ちの面にも大きな影響を与えます。
ムカムカが続くことで「なんで自分だけこんなにしんどいの?」と不安になったり、「もっと頑張らないと」と自分に無理をさせてしまったりすることも少なくありません。
でも、つわりは誰にでも起こりうる体の自然な反応であって、決して自分の努力不足ではないのです。
「これくらいなら大丈夫」「もう少しだけ我慢しよう」と思いがちですが、そうやって無理を続けてしまうと、体調がさらに悪化してしまうこともあります。
つらいと感じたときは、どうか我慢せずに、まずは身近な家族にその思いを伝えてみましょう。
そして、必要に応じて産婦人科やかかりつけ医に相談することも大切です。
医療機関では、つわりの状態に応じて点滴による水分補給や、栄養補助食品の提案、生活習慣の見直しといった具体的なサポートを受けることができます。
人によっては、栄養士によるアドバイスが役立つこともあります。
そうした外部の助けを借りることで、心にも余裕が生まれ、つわりを少しラクに感じられることもあるのです。
「ひとりで抱えこまない」
「頼っていい」
そんな気持ちで、つわりの時期を無理なく乗り越えていけるといいですね。
まとめ:自分に合った方法で、つわりを乗り越えよう
「なんとか食べられるけど気持ち悪い…」そんなつわりの時期は、体も心もとにかくつらく感じるものです。
なにをどうしてもスッキリせず、「一体いつまで続くのかな…」と不安になることもあるでしょう。
特に周囲にうまく伝えられず、ひとりで悩みを抱え込んでしまう方も少なくありません。
でも、そんなときこそ、ちょっとした食べ方や飲み方の工夫が大きな助けになります。
無理にたくさん食べる必要はなく、少しでも心地よく過ごせる時間をつくることが大切です。
冷たいものやにおいの少ない食材を選んだり、1日を通してちょこちょこと食べるスタイルにしたり。
そうやって自分なりの「ラクな方法」を見つけることで、つわりのしんどさも少しずつやわらいでいくはずです。
水分補給の仕方や休む姿勢など、身体にやさしいちょっとした習慣を取り入れることで、心の余裕も少しずつ戻ってくるかもしれません。
誰かに頼る勇気を持つことも、つわりと向き合う上ではとても大切なことです。
どうか、自分を責めたり頑張りすぎたりせず、やさしい気持ちで自分自身に向き合ってくださいね。
少しずつ、自分のペースでつわりの時期を乗り越えていきましょう。