障害者手帳を手にした日、真っ先に頭をよぎったのは「これって、会社に言わなきゃダメなのかな」という不安でした。
手帳を取得したことで何か大きく変わってしまうような気がして、胸の奥がざわざわして、夜になってもなかなか眠れない日が続きました。
職場の人たちにどう思われるだろう、仕事が続けられなくなるかもしれない、そんなふうに一人でぐるぐる考えてしまうこと、ありませんか?
だけど、時間が経ってから知ったのは「報告する義務はない」という事実でした。
それを知ったとき、少しホッとしたのと同時に、じゃあ今のまま黙って働き続けるのが本当に自分のためになるのかどうか、また新しい迷いが生まれてきたんです。
障害者手帳を持つというのは、目に見えない困難を抱えながらも、日々を必死に生きているという証でもあります。
でも「できるだけ普通に働きたい」「迷惑をかけたくない」そう思って無理を重ねてしまうこともあるんですよね。
この記事では、手帳を会社に伝えるか迷ったとき、どんなことを考えればいいのか、伝えることのメリットとリスク。
そして何より大切な「自分の心と体を守る」という視点について、制度だけでなく気持ちの面にも寄り添いながらお話ししていきます。
あなたが今抱えているその不安に、少しでもやさしく光が届きますように。
障害者手帳を会社に伝える義務はあるの?
「これって、会社に言うべきなのかな」と迷ってしまう理由
障害者手帳を取得したとき、まず多くの人が感じるのが「このこと、会社に伝えるべきなのかな」という迷いです。
それは決して珍しい悩みではなくて、誰にでも自然にわいてくるものだと思います。
私自身もそうでした。
手帳を取得した当初は、
- 目の前にある仕事のこと
- これからの生活のこと
- いろんな不安
「もし報告しなかったら不誠実って思われるんじゃないか」
「後からバレたら信用を失うんじゃないか」
と、頭の中が不安でいっぱいになったんです。
心のどこかで、
- ちゃんとしなきゃ
- 隠しごとはよくない
そんな中で知ったのが、「障害者手帳を取得したからといって、会社に報告する義務はない」という事実でした。
法律上も制度上も、伝えなかったからといって何か問題になることはありません。
これは厚生労働省もはっきりと示していることで、報告はあくまで“本人の意思”に委ねられているんです。
「義務がない」ことが、かえって心を迷わせることもある
「伝える必要はありません」と聞けば、本来は安心できるはずなのに、それでも気持ちがスッキリしないという方は多いと思います。
義務がないというのは、裏を返せば「自分で判断しなければならない」ということでもあるからです。
たとえば、「今はまだ体調が安定しているから、黙って仕事を続けたい」と思う人もいれば。
逆に「いざというときのために、今の状態を伝えておいたほうが安心だ」と考える人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
大切なのは、自分の体調や働き方、そして気持ちに合った判断をすることなんです。
でも実際には、「今のままでいいのかな」「いつか言わなきゃいけないのかな」と悩み続ける人が少なくありません。
私もそのひとりでした。
「自由に選んでいいですよ」と言われることが、こんなにも心にプレッシャーを与えるものなんだと痛感しました。
「誰にも言えない」ことで、心の負担が増えていく
伝える義務がないからといって、すべての人が心穏やかに過ごせるかというと、そうではありません。
実は誰にも相談できないまま一人で抱え込んでしまうことこそが、大きなストレスになっている場合もあるんです。
「今日は調子が悪くても、無理して頑張らなきゃ」
「うまくできないのは自分の努力が足りないせい」
そんなふうに、自分を責めてしまう気持ちが続くと、体調はさらに悪化してしまいます。
職場に何かを伝えていないことが、逆に自分を追い込む結果になってしまうことだってあるんです。
本当は、「今日は無理せずにこのくらいでいい」とか「もうちょっとサポートがほしい」と言えるだけでも、心の負担ってずいぶん軽くなるんですよね。
でも、それを言うことに対して「わがままって思われたらどうしよう」とか「評価が下がったらどうしよう」と考えてしまうのも、本当にわかります。
だからこそ、「言ってもいいし、言わなくてもいい。
だけど、心や体がしんどくなってきたら、無理せず誰かに話していいんだよ」というメッセージを、まずは自分自身に向けて伝えてあげてほしいんです。
「いつ、どう伝えるか」も、自分のペースで決めていい
報告するかどうか、というだけでなく、
- いつ伝えるか
- どんなふうに伝えるか
たとえば、「最近ちょっと体調に波がある」とか「集中できない日があって困っている」というふうに、いきなり“障害者手帳を取りました”と切り出す必要はないんです。
今感じている困りごとを、信頼できる相手に少しずつ相談するだけでもいい。
全部を一気に話そうとしなくていいんです。
職場に伝えるということは、自分を守るための手段のひとつであって、義務でも、負担でもありません。
そして、それは「伝えることで助けを求めていい」という小さなサインでもあるんです。
あなたが「今はまだ無理だな」と思えば、何も言わずにいる選択だって、しっかりとした自己決定です。
どんな判断をするとしても、「それでいいんだよ」と自分に言ってあげられるように、自分自身を責めないでいてほしいんです。
会社に伝えることで得られる「安心感」とは
「わかってもらえる」ことで、自分を責めなくてよくなる
私の知人に、長年メンタルの不調を抱えながらも誰にも言えずに働き続けていた女性がいます。
あるとき本当に限界がきて、ついに職場に事情を打ち明ける決意をしたそうです。
そのときの彼女の言葉が、今でも忘れられません。
「やっと、自分を責めなくてよくなった」と、涙ぐみながら言っていたんです。
それまでの彼女は、「他の人と同じように働けない自分はダメなんじゃないか」と毎日自分を責めていたんですよね。
でも、上司に話してみたら、意外にも「言ってくれてありがとう」と言われたそうです。
それだけで、心の重さがふっと軽くなったような気がしたと話していました。
誰かに自分の状態を伝えるというのは、とても勇気のいることです。
でも、その一歩が「ここにいてもいいんだ」「わかってもらえたんだ」という実感につながることもあります。
目には見えないけれど、心の中でじんわりと広がるその安心感は、自分らしく働き続けるための支えになるんです。
「合理的配慮」は、がんばれない自分を許すきっかけになる
障害者手帳を提出したことで、企業には「合理的配慮」を行う義務が生まれます。
この言葉を聞くと、何か特別な優遇措置のように思えて、申し訳なさを感じてしまうかもしれません。
でも、本当はそうじゃないんです。
合理的配慮とは、たとえば出勤時間を少し遅らせるとか、静かな場所で作業できるようにするなど、その人がその人らしく働けるように「環境を整える」だけのこと。
それって、ものすごく特別なことではなくて、本来誰にでも必要なことなんですよね。
たとえば、風邪をひいたらマスクをするし、暑い日にはエアコンを入れる。
そういう「当たり前の調整」が、少しだけ多く必要になるだけ。
それが合理的配慮です。
でもその調整を受け入れてもらえることで、「もう無理しなくていいんだ」「これでいいんだ」と、自分を責める気持ちがやわらいでいくのを感じる人もいます。
誰かに助けてもらえる場所があるというのは、本当に心強いものなんです。
「迷惑じゃない」と思えることで、職場が安心できる場所になる
障害者手帳を出すことで、最初に湧き上がる感情のひとつに「職場に迷惑をかけてしまうんじゃないか」という思いがあります。
わかります、本当にわかります。
私も、誰かに負担をかけてしまうくらいなら黙って頑張ったほうがいいんじゃないか、って何度も思いました。
でも、それって裏を返せば「自分のことを軽んじている」ってことなんですよね。
迷惑をかけたくない、心配をかけたくないというやさしさは、時に自分を苦しめる刃にもなってしまう。
ある職場で、配慮を受けて復帰した社員がいました。
最初はやっぱり周囲に気を遣ってばかりだったそうですが、上司が「あなたが無理しないことがチーム全体の安心につながるんだよ」と声をかけたそうです。
そうやって、「いてくれるだけでありがたい」と思ってもらえる職場があると知ったとき、人は少しずつ安心して居場所を感じられるようになるんですよね。
障害を持っていることは決して「足手まとい」なんかじゃなくて、支え合うことで全体のバランスが整っていく。
それに気づけたとき、職場が「頑張らなくてもいられる場所」になっていきます。
伝えることで起こりうる“リスク”にも向き合っておこう
「言ったら何かが変わってしまうかもしれない」という怖さ
障害者手帳を職場に伝えるかどうか、その迷いの奥には「この先、何かが変わってしまうかもしれない」という漠然とした怖さがあるんじゃないでしょうか。
私ももし今後、何かの理由で手帳を取得することになったとしたら、その瞬間、まっさきに頭をよぎるのは「職場に言えるだろうか」という不安だと思います。
「給料が下がるんじゃないか」
「今のポジションから外されるかも」
「同僚の目が変わるんじゃないか」
そんな思いが胸の奥に引っかかって、誰にも打ち明けられずに、一人で抱え込んでしまう。
実際にそうやって、長い間つらい気持ちを誰にも言えなかった人に、何人も出会ってきました。
どんなに制度が整っていても、人の気持ちはそんなに簡単に割り切れない。
それは本当に当たり前のことなんです。
雇用形態や収入に影響が出る可能性があることも
法律上は、「障害があることを理由に給料を下げてはいけない」と定められています。
つまり、手帳を出したというだけで賃金が減るようなことがあれば、それは違法行為になります。
でも実際には、体調に合わせて働き方を見直した結果として、短時間勤務になったり、非正規雇用に切り替わったりするケースもあります。
それによって、結果的に収入が減ってしまうということは現実として起こり得るんです。
私の知人にも、フルタイムから週4勤務に変わった人がいました。
最初は「やっぱりお金のことが気になる」と言っていましたが、それ以上に「もう頑張りすぎなくていいんだ」と思えたことで、表情がすごくやわらかくなったんですよね。
もちろん、家計や生活に直結することだから、慎重になるのは当然です。
家族のこと、将来のこと、考えなきゃいけないことはたくさんあります。
だからこそ、「伝えるかどうか」は自分だけの問題じゃないと感じてしまう人もいると思います。
だけど、健康を犠牲にして無理を続けた先にあるのは、もっと深刻な状態かもしれない。
そう思うと、「少しだけ働き方を変える」という選択も、未来を守るための勇気だと思えるようになってきます。
キャリアへの影響を不安に感じるのも当然のこと
長年積み上げてきたキャリアが、手帳を提出したことで一瞬にして壊れてしまうかもしれない…
そんな恐れを抱える人は、少なくありません。
「昇進のチャンスが減るんじゃないか」
「責任あるポジションを任されなくなるのでは」
その気持ち、すごくよくわかります。
私自身も、今までやってきたことがすべてリセットされるような不安を想像したら、簡単には口を開けないと思うからです。
でも実際には、会社によって対応や考え方は大きく違います。
きちんと個人の能力を見て判断してくれる企業もあれば、「相談してくれてありがとう」と言ってくれる上司もいます。
中には、障害を公表したことで「あなたの働き方に合わせた新しいポジションを用意します」とサポートしてくれたケースもあります。
とはいえ、すべての職場がそうだとは言いきれないのもまた現実。
だからこそ、焦らず、信頼できる人から少しずつ相談していくことが大切なんです。
「どこまで話すか」「誰に話すか」は、自分の手の中にある選択肢。
そのコントロール感を持っていること自体が、ひとつの安心材料になるんですよ。
それでも「言ってよかった」と思える瞬間が、きっとある
SNSで見かけた言葉に、強く心を打たれたことがあります。
「障害者手帳を出したら給料は下がった。だけど、出してよかった。今はちゃんと休めるし、自分を守れるようになった」
この投稿を見たとき、「ああ、これが本当の意味での“自分の人生を守る選択”なんだ」と感じました。
もちろん、手帳を伝えることで何かが完全にうまくいくわけではないかもしれません。
制度や職場の体制には限界もあるし、思ったような結果にならないこともあるでしょう。
でも、それでも「ひとりでがんばらなくていい」と思えたなら、それだけで十分価値がある選択だと私は思います。
傷つかないように黙って耐えるのではなくて、自分の弱さごと受け入れてもらうこと。
それができたとき、初めて本当の意味で安心できる場所が見えてくるのかもしれません。
企業が受けられる助成金とは?会社側の視点も知っておこう
「伝えること」は、あなたの味方を増やす一歩かもしれない
障害者手帳を会社に伝えることに対して、「職場に迷惑をかけてしまうんじゃないか」と不安になる気持ち、本当によくわかります。
私も過去に「自分の事情を話すことで、会社の手間が増えるんじゃないか」と心配したことがありました。
でも実は、あなたが手帳を提出することは、会社にとっても“ありがたいこと”になる場合があるんです。
え?と思うかもしれませんよね。
でも、これはちゃんと制度に裏打ちされた事実なんです。
企業には、一定数の障害者を雇用する義務があります。
これは「法定雇用率」と呼ばれていて、それを満たせない場合は国に納付金を支払わなければならない決まりがあります。
つまり、すでに働いている社員の中に障害者手帳を持っている人がいれば、その人をカウントできるというのは、会社にとって大きな意味があるんです。
あなたが「実はこういう状況で…」と打ち明けることは、決して迷惑ではありません。
むしろ「正社員として働いてくれていてありがとう」と感じてもらえるケースも多いんです。
雇用時に受けられる「特定求職者雇用開発助成金」
たとえば企業が新しく障害者を採用した場合、「特定求職者雇用開発助成金」という制度があります。
これは、ハローワークなどを通じて障害のある方を雇用した場合に、企業が受け取ることができる支援金で、金額は50万円~最大120万円にものぼることがあります。
こう聞くと、「会社が得するなんてズルい」と感じてしまうかもしれません。
でも、助成金は決して“利益を出すためのもの”ではありません。
実際には、あなたが安心して働ける環境を整えるために、会社も設備を整えたり、研修を用意したり、他の社員への周知や配慮の調整など、たくさんの時間と労力が必要なんです。
助成金というのは、そうした見えない努力をサポートするために、国から支給される仕組み。
だからこそ、それを活用することで、会社もあなた自身もより安心して働ける環境が整っていくんです。
働きやすい職場をつくるための「環境整備」支援もある
たとえば、車椅子の方が通れるように段差をなくしたり、スロープを設けたり、トイレを多目的対応にしたりといった、物理的な環境整備に対しても助成制度があります。
これは身体障害に限らず、静かな作業スペースが必要な方や、刺激に敏感な方のための配慮として、照明やレイアウトを変更するなどの工事にも対象が広がっています。
つまり、企業が「安心して働ける環境を用意する」という行動に対して、きちんと制度で応援してもらえる体制があるんです。
だから、「自分の存在が手間を増やしている」と思う必要はないんです。
あなたのために整えられた環境は、きっと他の誰かにとっても心地いい場所になる。
そうやって、全体の働きやすさにつながっていくのです。
職場定着のための「長く働く」を支える助成制度も
そして、もうひとつ大切なのが「職場定着支援助成金」という制度。
これは、障害のある社員が職場に長く安心して定着できるように、企業が取り組んだ支援に対して国が助成を行う仕組みです。
たとえば、定期的な面談を行ったり、体調に合わせて勤務時間を調整したり、復職支援の研修をしたりといった取り組みが対象になります。
この制度の存在があるからこそ、会社も「あなたを長く大切にしたい」と思えるし、「安心して働き続けてもらえるように工夫しよう」という姿勢を持ちやすくなるんですよね。
「会社に言うことで迷惑がかかる」は思い込みかもしれない
「会社に事情を伝えると迷惑をかける」
「面倒なことが増えるかもしれない」
そんなふうに思ってしまうのは、本当に自然なことだと思います。
でも実際には、あなたが申告することで会社も国の支援を受けやすくなるし、必要な配慮をしやすくなるという“相互のメリット”が生まれるんです。
伝えることは、決して「弱さをさらけ出すこと」じゃありません。
会社と一緒に「これからどうやって安心して働いていくか」を考えるスタート地点なんです。
だから、もし今「言ったほうがいいのかな」と迷っているなら、「あなたの声が、誰かの理解につながるかもしれない」ということを、ほんの少しでも心に留めておいてください。
給料は下がるの?よくある誤解とその本当のところ
「障害者手帳を出したら給料が下がるって本当?」という声に向き合って
この話題になると、よく聞こえてくるのが「障害者手帳を提出したら、給料が下がるんでしょ?」という言葉。
私も初めてその声を耳にしたとき、正直なところドキッとしました。
せっかく頑張って働いてきたのに、伝えたことでお給料まで減ってしまうなんて、あまりにも報われないような気がして、胸の奥がギュッと苦しくなったんです。
でも、それって本当なのかな?という疑問を持って、私はきちんと調べてみることにしました。
そしてわかったのは、「障害があることを理由に給料を下げることは、法律で禁じられている」という事実。
つまり、手帳を提出したからといって、自動的にお給料が下がるようなことがあれば、それは違法なんです。
これは、「障害者雇用促進法」という法律で明確に定められていることで、障害の有無に関係なく、労働者としての待遇に不当な差をつけてはいけないとされています。
なので、制度的には“給料が下がる”ことは前提にされていないんですね。
でも、じゃあなぜ「下がった」という声が多いのでしょうか?
短時間勤務に切り替えることで手取りが減るケース
実は「給料が下がった」と感じる背景には、働き方の変化があるケースが多いんです。
たとえば、心や体の状態によってフルタイム勤務が難しくなった場合。
医師の判断や合理的配慮に基づいて「短時間勤務」や「週数回勤務」に変更されることがあります。
当然ながら、働く時間が減れば、その分お給料も比例して少なくなります。
これは、「障害者だから減らされた」というわけではなく、「働ける時間が減ったから収入も変化した」というごく自然な流れなんですね。
私の知人も、以前は週5日フルタイムで働いていたのですが、手帳を提出したのをきっかけに週3日勤務に切り替えることにしました。
最初は「収入が減って不安」と話していましたが、それよりも「今は自分を責めずに働けることのほうが大きい」と、数ヶ月後には穏やかな表情で話してくれたのが印象的でした。
確かに、お金は生活に直結する大事なこと。
でも、心や体の不調を抱えながら無理して働き続けることの方が、もっと大きなリスクになることもあるんです。
非正規雇用への切り替えで生まれる誤解
もうひとつ、「給料が下がる」と感じる原因のひとつが、雇用形態の変化です。
手帳を提出したことで、企業と相談の上「正社員から契約社員やパート勤務へ切り替えた」というケースも少なくありません。
特に精神障害や発達障害などの場合は、最初から無理のない働き方を提案されることもあります。
統計的にも、障害者雇用全体では非正規雇用の割合が高い傾向にあります。
そのため、「手帳を出すと正社員じゃいられないの?」という疑問を抱くのも無理はありません。
でも大切なのは、そこに“本人の意思”があるかどうか。
会社の都合で一方的に変えられるのではなく、「今の体調に合った働き方を一緒に探していく中での選択」だったのか。
その視点を忘れないでほしいんです。
実際に、一時的に非正規に切り替えて回復に集中したあと、ふたたび正社員に復帰した人もたくさんいます。
今の選択は、ゴールじゃなくて“通過点”かもしれないんですよ。
最低賃金の例外はあるが、ごく限定的なケースに限られる
一部、重度の障害によって労働能力が著しく制限される場合に、「最低賃金の減額特例」が認められることもあります。
これは申請と審査が必要で、ごくまれなケースにのみ適用される制度です。
だから、「障害者=給料が安い」というのは完全な誤解です。
ほとんどの方は、一般の労働者と同じ最低賃金の保障を受けながら働いています。
むしろ、そんな誤解が広がってしまうことこそが、多くの人の選択肢や自信を奪ってしまっているのかもしれません。
だからこそ、正しい情報を冷静に受け取りながら、「自分に合った働き方ってなんだろう?」と考える時間を持つことが、すごく大切なんです。
まとめ
障害者手帳を取得したからといって、会社に報告しなければならない義務はありません。
法律や制度としても、それははっきりと認められている事実です。
でも、「言わなくていい」と頭で理解していても、気持ちがすっきり割り切れるかというと、それはまた別の話。
職場に言うことで関係が変わってしまうのではないか、給料が減るのではないか、評価が下がるのではないか。
そんな不安が心の中をぐるぐるめぐって、誰にも相談できずにひとりで悩んでしまう。
そんなときこそ、自分の気持ちにそっと寄り添ってあげてほしいんです。
「伝えるか、伝えないか」ではなく、「どうすれば自分らしく働き続けられるか」という視点で考えること。
それが、これから先の働き方や人生にとって、きっといちばん大切な軸になります。
職場に伝えることで合理的配慮を受けられたり、税制上の支援を受けられたり、会社側にも助成制度があることを知れば、「自分だけが負担をかけているわけじゃない」と思えるはずです。
迷うことは決して弱さじゃありません。
何が正解かは人それぞれ。
でも、ひとつだけ確かなのは、あなたが自分の心と体を守ろうとするその選択は、どんな形であれ、間違いじゃないということです。
これから先も、自分を大切にする気持ちをどうか忘れずにいてくださいね。