秋になると食卓にのぼることが多くなる「さんま」。
香ばしく焼けた皮の香りがふわっと立ち上ってくると、それだけでご飯がすすみそうですよね。
外で炭火を使って焼くさんまの美味しさは格別で、秋の風物詩として楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
ところで、そんなさんまを食べるときにふと疑問に思うのが、「内臓って食べるのが普通なの?」ということ。
内臓の部分は苦味があって好き嫌いが分かれますし、家庭や地域によっても食べ方が違うかもしれません。
私自身も最初はちょっと抵抗がありましたが、調べてみるとさんまの内臓には栄養がたっぷりで、実はおいしく食べられる方法もあるんです。
今回は、そんなさんまの内臓について「食べるのが当たり前なのかどうか」という素朴な疑問から、内臓の栄養価についてのこと。
そして苦手な人でも楽しめる食べ方まで、やわらかい言葉でわかりやすくご紹介していきます。
この記事を読み終わるころには、さんまの内臓に対する見方が少し変わっているかもしれませんよ。
さんまの内臓って食べるもの?それとも残すもの?
内臓まで食べるのは昔からの習慣?
昔からさんまを丸ごと焼いて、頭から尾までぺろりと食べる人は少なくありません。
とくに漁村や海の近くに住んでいる人たちの間では、新鮮なさんまをまるごと味わうのが当たり前で、内臓までしっかり食べるのが一般的な習慣になっていました。
中でも内臓の部分、特に「ワタ」と呼ばれる部分は、独特のほろ苦さがあり、それが好きだという人も少なくないんです。
この苦みが、お酒のおつまみにもぴったりで、居酒屋などでも人気の一品になっています。
また、年配の方の中には「内臓まで食べないともったいない」と感じている人も多く、子どものころから自然と内臓も含めて食べる習慣が根づいていたという話も聞かれます。
こうした家庭の味や昔ながらの食べ方は、代々引き継がれてきた食文化の一部ともいえますね。
食べない派の理由もある
一方で、「苦くて苦手」「なんとなく食べにくい」と感じて、内臓を残す人もいます。
特に子どものころに内臓を食べて「苦かった」「生臭かった」という印象が残ってしまうと、大人になっても自然と避けてしまう傾向があります。
また、見た目や食感に抵抗を感じる人もいて、「内臓=グロテスク」というイメージから敬遠してしまうことも。
調理方法によっては内臓のクセが強く出ることもあるため、食べ慣れていない人にはハードルが高く感じるのかもしれません。
でも、それにはちゃんと理由があって、味覚は年齢とともに変わるといわれています。
子どものころには苦手だった味でも、大人になるにつれて「おいしい」と感じられるようになることもあるんです。
ですから、さんまの内臓に苦手意識がある人でも、大人になった今、改めてチャレンジしてみると「案外いけるかも」と思えるかもしれませんよ。
さんまの内臓が食べられる理由とは
無胃魚だからお腹の中は空っぽ?
さんまは「無胃魚(むいぎょ)」と呼ばれる魚で、胃を持たないという特徴があります。
普通の魚は胃でいったんエサをためて消化するのですが、さんまはその過程がなく、エサを飲み込むとすぐに腸に送って短時間で消化・排出してしまいます。
そのため、お腹の中に食べたエサが長く残っていることがなく、内臓部分に消化途中のものが残らないのです。
さらに、さんまの主なエサは動物性プランクトンや小型の甲殻類といった比較的消化しやすいもの。
これらを食べてから30分ほどで消化を済ませるといわれていて、内臓が「きれいな状態」であることが多いのです。
その結果、内臓特有の臭みやエグみが少なくなり、比較的おいしく食べられるとされているんですね。
夜に獲れるからエサも残らない
さんま漁は主に夜に行われることが多く、これはさんまの習性と関係しています。
夜になるとさんまは海面近くに浮上して光に集まる性質があるため、漁師さんたちはこのタイミングを狙って漁をします。
夜の時間帯にはさんまはエサをあまり食べないため、体内にはほとんどエサが残っていない状態なんです。
さらに、さんまは水揚げされたあとも短時間で市場に出回ることが多く、新鮮なまま手に入りやすい魚のひとつです。
そのため、内臓の状態も良く、調理しても臭みが出にくいというメリットがあります。
こうした生態や漁のタイミングが重なって、さんまの内臓は「食べても大丈夫」「むしろおいしい」とされている理由につながっているんですね。
さんまの内臓には栄養がたっぷり!
ビタミンAで粘膜強化&風邪予防
さんまの内臓には、ビタミンAがたっぷりと含まれています。
ビタミンAといえば、視力の維持に欠かせない栄養素として知られていますが、それだけではありません。
目の健康を守るだけじゃなく、体の中でとても大切な役割をいくつも果たしているんです。
たとえば、鼻や喉の粘膜を丈夫に保つ働きがあり、これがウイルスや細菌の侵入を防いでくれるんですね。
つまり、ビタミンAがしっかり体内にあると、風邪などの感染症にもかかりにくくなるということ。
特に秋から冬にかけては乾燥しやすい季節なので、喉のうるおいを守るビタミンAの存在はありがたい限りです。
さらに、肌のターンオーバーを促す効果もあるので、美容面でも注目されている栄養素です。
乾燥肌の予防や、アンチエイジングを意識している方には嬉しいポイントですね。
さんまのワタ(内臓)は小さい部分ではありますが、このビタミンAが凝縮されていて、効率よく摂取できるんです。
薬やサプリメントに頼らず、普段の食事からこうした栄養をとれるのは、体にもやさしい方法と言えるでしょう。
鉄分・B12で貧血対策にも
さんまの内臓には、鉄分やビタミンB12が豊富に含まれています。
これらは私たちの体にとってとても大切な栄養素で、特に血液の健康と深い関係があります。
鉄分は、赤血球の中にある「ヘモグロビン」という成分を作る材料になります。
このヘモグロビンが、体のすみずみに酸素を届ける役割を担っているんですね。
もし鉄分が不足すると、酸素がうまく運ばれなくなってしまい、立ちくらみや息切れ、疲れやすさといった症状が出やすくなります。
これがいわゆる鉄欠乏性貧血と呼ばれる状態です。
ビタミンB12も同じく赤血球の生成に欠かせない栄養素で、神経の働きを保つ役割も持っています。
不足すると神経がうまく働かなくなり、手足のしびれや集中力の低下を感じることもあります。
特に女性は月経による鉄分の消耗があるため、意識的に鉄分やビタミンB12をとることが大切だといわれています。
そんなとき、さんまの内臓を取り入れることで、手軽に栄養を補うことができるのはうれしいポイントですよね。
普段からちょっと貧血気味かなと感じる方や、疲れが抜けにくいと感じている方は、ぜひさんまの内臓にも注目してみてください。
カルシウムも含まれている!
さらに、さんまの内臓にはカルシウムも豊富に含まれています。
カルシウムといえば「骨や歯を丈夫にする栄養素」としてよく知られていますが、それだけではありません。
実は体のさまざまな働きに関わっていて、健康維持に欠かせない存在なんです。
まず、カルシウムは骨や歯の材料となるだけでなく、骨密度を維持することで骨粗しょう症の予防にもつながります。
成長期の子どもはもちろん、年齢を重ねた大人にとっても非常に重要な栄養素なんですね。
また、神経の伝達や筋肉の収縮にも深く関係していて、イライラを感じにくくしたり、筋肉のけいれんを防いだりする効果も期待できます。
睡眠の質にも関わるといわれているため、最近なんとなく眠りが浅いと感じている方にもおすすめです。
さんまの内臓のように、自然な食品からカルシウムをとることは、体への吸収効率も良く、毎日の健康づくりにとても役立ちます。
特に魚介類から得られるカルシウムは、リンとのバランスも良いとされているので、より効果的に活用されやすいと言われています。
普段あまり意識していない方も、さんまを食べるときにはぜひ内臓にも注目して、上手に栄養をとり入れてみてくださいね。
さんまの内臓が苦手でもおいしく食べるコツ
塩焼きで身と一緒に食べる方法
さんまの内臓の苦味が気になるという人には、塩焼きにしてから身と一緒に食べる方法がおすすめです。
この方法なら、内臓の苦味が魚のうまみや脂の甘みとうまく混ざり合って、全体としてバランスの取れた味わいになります。
焼きたての香ばしい皮やジューシーな身と一緒に口に入れることで、内臓だけを単体で食べたときのような「うっ」となる感じがやわらぎます。
さらに、焼くことで内臓の独特なクセや生臭さが飛び、苦味もほどよく抑えられるので、初心者にも比較的食べやすくなるのが特徴です。
日本料理店などでは、このようにさんまを丸ごと味わうことが「通の食べ方」として紹介されることもあります。
また、ぜひ添えてほしいのが大根おろしとお醤油。
この2つは内臓の風味をやさしく中和してくれて、口当たりをぐっとまろやかにしてくれます。
さっぱりとした大根おろしの清涼感と、醤油のうまみが合わさることで、苦味が気にならなくなるだけでなく、後味までおいしく仕上がりますよ。
苦手意識のある方も、身と一緒に一口だけでも試してみると、「あれ?意外といけるかも」と思えることがあります。
さんまの塩焼きを丸ごと味わう楽しみ方として、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
ワタ焼きで香ばしく苦味もマイルドに
もうひとつのおすすめが「ワタ焼き」です。
これはさんまの内臓(ワタ)だけを取り出して、塩をふって焼くというシンプルながらもとても風味豊かな食べ方。
さんまの頭の付け根から包丁を入れて内臓を取り出し、それをアルミホイルにのせてグリルなどで焼くだけというお手軽さも魅力です。
このとき、内臓に軽く塩をふっておくことで、苦味がほどよく引き締まり、焼いたときに香ばしい風味が引き立ちます。
グリルで焼く場合は強火で5~7分ほどが目安。
表面がカリッとしてきたら、食べごろです。
くちゃっと丸めたアルミホイルを敷くと、くっつかずきれいに焼けるのでおすすめですよ。
焼きたてのワタは、苦味の中にも深いコクがあり、お酒との相性も抜群。
特に日本酒や焼酎と合わせると、そのうまみが引き立ち、大人の味わいを楽しめます。
食べた瞬間にふわっと広がる香ばしさとほろ苦さがクセになるという声も多いです。
内臓に抵抗がある方も、ワタ焼きなら「これはアリかも」と感じられることがあるので、塩焼きとはまた違った楽しみ方として、ぜひ一度試してみてくださいね。
鮮度の見分け方もチェック!
内臓をおいしく安全に食べるには、さんまの鮮度がとても重要です。
新鮮なさんまを見分けるには、いくつかのポイントがあります。
まず、お腹の部分にハリがあってやわらかすぎないものを選びましょう。
ふにゃっとしていたり、押すとへこむものは避けたほうが無難です。
次に、背中の色。
青黒くツヤがあり、しっかりとした光沢があるさんまは新鮮な証拠です。
また、目が澄んでいて濁りがないもの、さらに口先がほんのり黄色くなっているものも、鮮度が高いといわれています。
これらのポイントをチェックしながら選ぶことで、より安心して内臓までおいしく楽しむことができますよ。
買ったあとはなるべく早く調理するのも大切。
冷蔵庫で保存する場合でも、内臓は傷みやすいのでできればその日のうちに調理して食べるのが理想です。
まとめ|結局さんまの内臓は食べるのが正解?
マナーというより“好み”でOK
さんまの内臓を食べるかどうかは、マナーというよりも「好み」で決めてOKです。
誰かに「絶対に食べなきゃダメ」と言われることもありませんし、食べないからといって失礼にあたることもないので安心してください。
中には「内臓まで食べるのが本当の食通」といった声もありますが、それはあくまでも個人の価値観です。
さんまの楽しみ方は人それぞれでよく、塩焼きだけでなく、開きや煮つけ、刺身などバリエーションもいろいろあります。
ですので、自分が「おいしい」と思える食べ方を見つけることが、なにより大切です。
無理せず一口試してみては?
これまで敬遠していた方も、今回ご紹介した食べ方で、一口だけでも試してみてはいかがでしょうか。
特にワタ焼きや、大根おろしと一緒に味わう方法は、苦味が和らぎやすく、内臓が苦手な人でもチャレンジしやすい食べ方です。
「苦い」「臭い」と思っていたイメージが、意外と覆されるかもしれません。
ほろ苦さの中にあるうまみやコク、そして栄養価の高さに気づくと、「内臓も悪くないかも」と思えるようになることもありますよ。
秋のさんまは脂がのっていて、まさに旬の味覚。
せっかくの季節をもっと楽しむためにも、さんまをまるごと味わうという選択肢を、ぜひ一度ためしてみてください。
新しい発見と出会えるかもしれませんよ。