再婚を考えたとき、心の中にふとよぎる「本当にこの選択で大丈夫だろうか」という不安。
その中でも「養子縁組をするかしないか」は、多くの再婚家庭にとってとても繊細なテーマです。
戸籍や法律の話だけでは済まされないし、
「それぞれの家族の事情」
「子どもの年齢や気持ち」
「元夫との関係」
「周囲の理解」
など、ひとつとして同じ答えがないからこそ、迷って当然なんです。
世間では「再婚したら子どもを養子縁組して当然」といった空気がいまだに根強くありますが、実際には「縁組をしない」という選択をする家庭も増えています。
それは決して無責任な逃げではなく、「子どもの気持ちを最優先に考えた結果」や「家族全体の安心を守るための判断」であることが多いのです。
この記事では、再婚にともなう養子縁組の是非について、法律的な影響だけでなく、心理的・社会的な側面も含めてていねいに解説します。
迷いながらも前を向いて歩こうとしているあなたが、「わたしたちにとってのベストな選択」が見つかるように、心を込めてお届けします。
どうか安心して読み進めてくださいね。
再婚で養子縁組をしないという選択が増えている理由
“家族のかたちはひとつじゃない”という考え方が広がってきた
一昔前までは、再婚するなら「新しい夫と子どもを養子縁組させるのが当然」と考える人が多かったものです。
戸籍をひとつにまとめて、みんな同じ苗字になって初めて「本当の家族になれる」という価値観が、社会のなかに当たり前のように存在していました。
けれども今は、そんな考え方に縛られすぎず、もっと柔軟に「自分たちにとって無理のない家族のかたち」を大切にする人が増えてきました。
実際に、厚生労働省や家庭裁判所の統計を見ても、再婚しても養子縁組をあえてしない家庭の割合が、少しずつですが増えている傾向が見られます。
それは、法律上の親子関係にこだわるよりも、「今の生活や子どもの心の安定を守るほうが大切」と感じる親が増えているからかもしれません。
子どもの気持ちに寄り添う家庭が増えている
再婚という大人の事情に、いちばん大きな影響を受けるのはやっぱり子どもです。
戸籍が変わる、苗字が変わる、家族の呼び方が変わる。
それって、想像以上に子どもの心を揺さぶる出来事なんですよね。
たとえば、小学生の女の子が「お父さんが変わるってどういうこと?」と泣きながら聞いてきた、という話を聞いたことがあります。
それくらい、子どもにとっての“父親”という存在は大きく、敏感なもの。
まだ心が成長の途中にある時期に、「大人の事情」で急に家族の定義が変わってしまうことは、子どもにとって大きなストレスや混乱になる可能性があります。
だからこそ、「今のタイミングでは無理に縁組をしなくてもいい」と考える家庭が増えているのです。
子ども自身が納得し、心から「新しいお父さんと家族になりたい」と思えるその日まで、待ってあげるのも立派な愛情です。
苗字を変えないことで生活環境を守れる
養子縁組をすると、基本的に子どもは新しい父親の戸籍に入り、苗字も変更されます。
けれども、学校や習い事、地域のつながりのなかで長年慣れ親しんできた苗字を急に変えるのは、子どもにとって大きな負担になることがあります。
特に思春期の子どもや、親しい友だち関係ができている場合などは、「どうして苗字が変わったの?」と聞かれることが強いプレッシャーになることも。
子ども自身が「言いたくない」と感じれば、それだけで学校生活が息苦しいものになってしまうかもしれません。
養子縁組をしなければ、苗字はそのままでいられます。
あえて変えないことで、子どもにとっての“変わらない日常”を守れるというのは、実はとても大きな安心につながるんです。
元夫からの養育費をめぐるトラブルを避けるために
もうひとつ、養子縁組をしない理由としてよく聞かれるのが、養育費の問題です。
法律上、養子縁組をすると、新しい父親(養父)にも子どもに対する「扶養義務」が生じます。
このとき、元夫の側から「新しい父親ができたのだから、もう自分の養育費負担を減らしてほしい」と言われることがあるのです。
現実には、家裁などで養育費の見直しを求められたとき、縁組の有無が判断材料のひとつになるケースもあります。
つまり、縁組をしたことによって、元夫が“義務から解放された”と主張する可能性があるということ。
そういったトラブルを未然に防ぐ意味でも、あえて養子縁組をしないという判断をするご家庭は少なくありません。
子どもの生活の安定、金銭的なサポート体制を守ることが最優先。
縁組をしないことで、それが可能になるのであれば、十分に正当な選択肢の一つといえるのです。
養子縁組が親子関係の「証明」ではないという理解
そして何よりも大切なのは、「養子縁組をしていない=親子ではない」というわけではないということ。
紙の上では他人でも、一緒に過ごした時間や、積み重ねてきた思いやりが、本当の“家族”をつくっていきます。
実際に、縁組をせずに過ごしているけれど、とても強い絆で結ばれている親子関係もたくさんあります。
逆に言えば、縁組さえしていればすべてがうまくいく、というわけでもないのです。
形式にとらわれすぎず、自分たちの気持ちと生活を大切にする姿勢こそが、これからの家族のかたちとして支持されてきているのかもしれません。
養子縁組をしないことで得られる安心とは?
養子縁組をしないという選択は、決してネガティブな決断ではありません。
むしろ今の時代では、「子どもの生活と気持ちを優先した、前向きで思いやりに満ちた判断」として捉えられるケースが増えてきました。
再婚相手との関係が良好であればあるほど、縁組を焦らず、子どものタイミングに合わせる姿勢は、子育てにおいて非常に重要な意味を持ちます。
ここでは、実際に養子縁組をしないことによって得られる、心理的・社会的・法的な“安心”について具体的に見ていきましょう。
子どもの「苗字」がそのままでいられることの大きな安心
子どもにとって、自分の苗字は「これまでの人生そのもの」です。
たとえ両親が離婚し、母親が再婚したとしても、子どもはこれまで使ってきた自分の名前に、アイデンティティの一部を感じています。
「うちの子、苗字が変わるのをものすごく嫌がっていて…」という声は本当によく聞きます。
特に小学校高学年~中学生くらいの思春期の子は、クラスで呼ばれる名前が変わることに強い抵抗を示す傾向があります。
友達からの「なんで苗字が変わったの?」という一言が、想像以上に心に刺さることもあるのです。
養子縁組をしなければ、基本的に子どもの苗字は変わりません。
家庭裁判所に申し立てをしたり、複雑な戸籍上の変更手続きを取る必要もなく、これまで通りの生活を続けられることが、子どもにとっては安心材料になります。
通学・習い事・各種書類の手間やトラブルを防げる
苗字が変わると、学校や塾、習い事など、あらゆる場所で名義変更の手続きが発生します。
担任の先生への説明、通知表の名前変更、通学定期券の再発行、場合によっては口座や保険証まで…。
大人にとっては「ただの手続き」かもしれませんが、子どもにとっては「周囲に知られたくないことを何度も説明しなければならない」という精神的な負担になります。
実際にそれを理由に不登校気味になる子や、精神的に不安定になるケースも見られます。
養子縁組をしないという判断は、こうした“見えにくいけれど確かな負担”から子どもを守ることにもつながっているのです。
元夫からの養育費が減額・免除されにくくなる
養子縁組によって法的な「親子関係」が再婚相手との間に成立すると、法律上、再婚相手が第一順位の扶養義務者となります。
それを理由に、元夫が家庭裁判所に「養育費の見直しを求める調停」を申し立てるケースもあります。
たとえば、「再婚相手が経済的に安定しているなら、私の養育費はもう不要では?」といった主張をされることもあります。
もちろん、すぐに減額が認められるわけではありませんが、話し合いや調停の手間、感情的なもつれが生じることもあるのです。
養子縁組をしていなければ、元夫は引き続き「実父」としての扶養義務を負い続けます。
養育費の継続が確保されやすくなるため、子どもの生活の安定にもつながるのです。
将来的な「離縁」のリスクを避けられる
養子縁組は一度してしまうと、関係を解消するには「離縁」の手続きが必要になります。
この離縁は、互いの合意がある場合を除いて、裁判などの法的手続きを踏まなければなりません。
特に、子どもが思春期で再婚相手との関係が微妙な時期に縁組をしてしまうと、後になって「やっぱり嫌だった」と関係がこじれてしまう可能性も否定できません。
その場合、形式的には親子関係であるがゆえに、かえって身動きが取りづらくなることもあります。
だからこそ、「本当に必要なときが来るまで、あえて縁組しない」という姿勢は、慎重で責任ある選択だといえるのです。
焦らず、でも繋がっていられる安心感
あるママがこう言っていました。
「私は子どもの気持ちを一番にしたかったから、縁組はしなかった。
でも、夫はずっと“お父さんとしてできることをしたい”と言ってくれた。それだけで十分でした」
縁組をしていなくても、心がつながっていれば、関係は育ちます。
むしろ形式に頼らず、時間をかけて“お父さん”として受け入れていける関係こそ、子どもにとって本当の安心なのかもしれません。
養子縁組をすることで得られる温かさもある
「養子縁組をしない」という選択がある一方で、「やっぱり縁組をして“本当の家族”になりたい」と願う家庭もたくさんあります。
それは、単に法的なつながりを求めるというよりも、「心から子どもと向き合いたい」「家族としてひとつになりたい」という、強い思いのあらわれです。
ここでは、養子縁組をすることで得られる“あたたかい変化”や“信頼関係の深まり”について見ていきましょう。
「家族みんなが同じ苗字」になる喜び
苗字がひとつになる――これは、見た目以上に大きな安心感を生みます。
あるママは、最初は子どもが苗字を変えることに抵抗を示していたけれど。
ある日ふと「ママと同じ名前になれるのって、ちょっと嬉しいかも」と笑って言ってくれたと話してくれました。
そのときのことを、「“一緒の名前”って、思ったよりも“家族ってこういうことなんだ”って実感できる瞬間だった」と語っていました。
家族写真に写るとき、学校の名簿を見るとき、病院で呼ばれる名前がそろっている。
それだけで、子どもにとっても再婚相手にとっても「ちゃんとつながってるんだ」と実感できる場面が増えていきます。
親としての責任を形にできる
再婚相手が「自分もこの子の父親としての責任をちゃんと持ちたい」と思うとき、養子縁組はその気持ちを明確に形にできる手段になります。
法律的には、養子縁組をすると親子関係が正式に成立し、実の親と同じく扶養義務が生じます。
これは単なる“義務”ではなく、「親として育てていく覚悟」の証でもあります。
実際に、「血のつながりはないけれど、自分にとっては大切な子ども。
だからちゃんと法的にも父親になりたい」と語る男性はとても多いです。
そうした気持ちに対して、子どもが「ありがとう」と思えるような関係性が築けたら、それはとても尊くあたたかい絆になりますよね。
相続や法的保護の観点からもメリットがある
将来的なことを見据えると、養子縁組によって「相続の権利」が生まれるという点も重要です。
縁組がなければ、再婚相手(養父)の遺産を子どもが受け取る権利はありません。
けれど、縁組をしておけば、実子と同じく相続の対象になります。
もちろん、お金のことだけが目的ではありません。
「最後まで家族として守りたい」「遺された子どもが困らないように」という思いがあってのこと。
また、法的な親子関係があることで、医療の場面や災害時の手続きなどでも、よりスムーズな判断や対応が可能になります。
いざというときに「他人扱いされない安心感」も、養子縁組によって得られる現実的なメリットのひとつです。
子どもの成長とともに深まる「本当の親子関係」
最初は他人だった者同士が、時間をかけて家族になっていく過程には、言葉にできないくらいの愛と葛藤があります。
でも、養子縁組というかたちを選んだことで、「この子のために自分は何ができるか」「どう関わっていくか」をより真剣に考えるようになった、という声は多く聞かれます。
ある家庭では、再婚当初ぎこちなく距離をとっていた息子が、高校生になる頃には自然に「父さん」と呼ぶようになったそうです。
「最初はただの“母の再婚相手”だったけど、今は“自分の父親”と胸を張って言える」そんな気持ちの変化は、縁組という土台があったからこそ築けた関係かもしれません。
焦らず、お互いに納得して進めることが大切
ただし、養子縁組は「すれば安心」ではなく、「納得してすること」が何よりも大切です。
無理に話を進めてしまうと、子どもに不信感が残ったり、逆に親子関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
だからこそ、再婚相手・実の親・子どもそれぞれの気持ちをていねいにすり合わせながら、必要なタイミングで選ぶことが大切です。
ときには、専門家やカウンセラーの手を借りるのも、立派な選択肢のひとつです。
養子縁組をすることで得られるあたたかさには、法的な安定だけでなく、心のつながりを深める力があります。
「家族になりたい」と思い合う気持ちに、制度がそっと背中を押してくれる――
そんなふうに、安心と信頼が重なっていくプロセスを大切にしていきたいですね。
再婚で養子縁組しない割合は?する場合としない場合の判断基準は?
再婚を考えたとき、養子縁組をするかしないかで悩むのはあなただけではありません。
実際、多くの再婚家庭が同じように考え、迷い、時には悩みながら、自分たちにとっての“正解”を探しているのです。
ここでは、実際にどれくらいの家庭が養子縁組をしているのか、そして「する」「しない」それぞれの判断の裏側にある、リアルな理由についてご紹介します。
養子縁組を「した」家庭はおよそ6割
ある民間調査によれば、再婚した家庭のうち60%以上が養子縁組をしたというデータがあります。
この数字を見て、「やっぱり縁組するのが普通なんだ…」と思う方もいるかもしれません。
でも、数字だけを見て焦る必要はありません。
なぜなら、その理由を深掘りしてみると、「流れでそうなった」「周囲に勧められて」といった、“なんとなくの空気”に流されたような選択が多く見られるからです。
たとえば、
- 養子縁組はするものだと思っていた
- 彼(再婚相手)が“本当の親になりたい”と言ってくれた
- 子どもが“同じ苗字になりたい”と言った
- 将来の相続のため
もちろんどれも立派な動機ですが、それが本当に“家族全員が納得したうえでの選択”だったかどうかは、また別の話ですよね。
養子縁組を「しなかった」家庭も約3~4割
同じ調査では、養子縁組をしなかった家庭は約35%前後という結果も出ています。
この数字、実は想像より多くて驚かれる方も多いのではないでしょうか。
私自身、最初にこの統計を見たとき、「こんなにも“縁組しない”選択をしている人がいるんだ」とちょっと心強くなりました。
養子縁組をしなかった理由としては、
- 子どもの苗字が変わるのがかわいそうだった
- 思春期でデリケートな時期だった
- 学校や世間体を気にした
- 親族に反対された
- 再婚相手が“無理して親になる必要はない”と考えた
- 子どもがすでに成人・自立していた
- 手続きの必要性を感じなかった
つまり、再婚後の家族の形には「こうしなければいけない」という絶対的な正解はないのです。
数字に縛られず、「自分たちの答え」を見つけることが大切
養子縁組をした家庭が多いからといって、あなたも必ずそうしなければいけないわけではありません。
また、逆に縁組をしない家庭が増えているからといって、「縁組をするなんて時代遅れ」なんていうこともありません。
大切なのは、
「この子にとってどうするのがいちばん安心できるか」
「再婚相手との関係性をどう築いていきたいか」
という、“わが家の気持ち”に正直でいることです。
世間の統計はあくまで“参考情報”。
比べすぎると、かえって自分たちの本音を見失ってしまうこともあります。
数よりも、あなたと家族が心から納得できるかどうかを大切にしてほしいのです。
迷ったときは、子どもと一緒に「気持ち」を確認してみて
判断に迷ったときは、ぜひ子どもとも向き合って話してみてください。
ときには「そんなこと、まだ分からない」と言われるかもしれません。
でもその反応も、子どもなりの“今の気持ち”なのです。
子どもが安心して本音を話せるよう、ゆっくり時間をかけて、無理に結論を急がないこと。
その姿勢こそが、養子縁組をするかしないか以前に、子どもとの信頼を深める大切な一歩なのではないかと思います。
再婚した時の子どもの苗字はどうする?
再婚をすると、ふと突きつけられる「子どもの苗字、どうしよう?」という現実。
苗字はただの“名前”ではなく、子どもにとっての「自分らしさ」や「これまで生きてきた証」のような存在でもあります。
親が再婚したからといって、当然のように子どもの苗字を変えるべきなのか――。
この問いに対する正解は、家庭の数だけあるのかもしれません。
だからこそ、焦らずに、一つひとつの選択肢を丁寧に見ていきましょう。
実際の家庭では、苗字をどうしているの?
ある調査によると、再婚後に子どもの苗字をどうしたかという質問に対し、
- 再婚した夫の苗字にした…51.5%
- 妻(母親)の旧姓を継続した…25%
- 元夫の苗字のままにした…13.2%
つまり、半数以上の家庭が「夫の苗字に変更」していますが、それ以外の選択をしている家庭も少なくないというのが現実です。
これは、家族の価値観や子どもの年齢、学校環境、元夫との関係性など、さまざまな事情を踏まえた上での選択であることがうかがえます。
「みんな同じ苗字」にこだわる必要はある?
「せっかく家族になったんだから、苗字も揃えた方がいいよね」
そう思う気持ちも、もちろんよくわかります。
同じ苗字を名乗ることで“ひとつの家族”という実感が生まれたり、書類上の手続きがスムーズになったりというメリットも確かにあります。
けれど、子どもにとっては必ずしも“良いこと”ばかりとは限りません。
特に小中学生くらいの年齢では、周囲の目や友だちからの質問が気になる時期。
「なんで名前が変わったの?」と聞かれて戸惑ったり、自分だけ“よそ者”のように感じてしまったり。
家庭内では愛情でつながっていても、外の世界で“変化”を感じさせられることが、子どもにとっては大きな負担になることもあるのです。
苗字を変えなかった理由にはどんなものがある?
苗字を変えなかった家庭の声には、こんな理由が多く挙がっています。
- 子どもが嫌がったため
- 学校や先生への説明が面倒だった
- 苗字変更による心理的なストレスを避けたかった
- 子どもの年齢が高く、今さら変更する必要を感じなかった
- 元夫との関係が続いており、養育費や面会の面で混乱を避けたかった
子どもがまだ小さければ、環境変化への適応も早いかもしれません。
けれど、年齢が上がるにつれ、“今の自分”を守りたいという気持ちが強くなるのも自然なことです。
苗字変更には法的な手続きも関係する
養子縁組をしないまま子どもの苗字を変えたい場合は、「子の氏の変更許可」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
また、学校や保育園への届け出、保険証やパスポートなどの名義変更など、意外と手続きが多いのも現実。
これが“面倒”というより、“大ごと”に感じられて踏み切れない家庭もあります。
その一方で、養子縁組をすれば自動的に苗字が変わるという側面もあり、そこにメリットを感じて縁組を選ぶ人もいます。
つまり、「苗字を変える=縁組する」とは限らず、「縁組をしない=苗字を変えられない」わけでもないということ。
法的な知識をしっかり確認しておくことも、後悔しない選択につながります。
最後は子どもの気持ちに耳を傾けて
このテーマでいちばん大切なのは、やはり子ども自身の気持ちです。
たとえば、あるお子さんは「ママが変わっても、ボクはパパの子なんだって思っていたいから、苗字はそのままがいい」と言ったそうです。
その一言に、母親は思わず涙がこぼれたといいます。
子どもなりにちゃんと感じていて、自分の“居場所”を大事にしようとしているんですね。
たとえ親としては「みんな同じ名前にした方が自然」と思っていても、子どもが違和感を抱えていたら、それは“絆”ではなく“負担”になってしまうかもしれません。
だからこそ、苗字については一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合い、「気持ちに寄り添った決断」をしてほしいのです。
苗字が違っても“本当の家族”は築ける
最後にひとつ、お伝えしたいことがあります。
それは、「苗字が違っていても、家族になれる」ということ。
血縁も戸籍も、苗字さえも、“家族の条件”ではないと私は思います。
毎日を一緒に過ごし、泣いたり笑ったりしながら、手を取り合っていく日々そのものが“家族”なんですよね。
「苗字」というカタチにこだわらず、まずは“心の距離”を近づけていくこと。
それが、何よりも強くて、優しい絆をつくる一歩になるはずです。
再婚前に話し合って決めておくべき10項目
結婚って、「好き」だけじゃ続かないとよく言われますよね。
ましてや再婚となると、子どもや元パートナー、生活のこと、お金のこと……いろんなものが関係してきます。
最初の結婚で「話し合いが足りなかった」と感じている人ほど、「今度こそ後悔したくない」という気持ちが強いはずです。
だからこそ、再婚前にしっかり“すり合わせ”をしておくことがとても大切。
ここでは、再婚前にパートナーと一緒に話し合っておきたい10のポイントを、心の準備も含めて丁寧にご紹介します。
① 元夫との関係や連絡・面会のルール
元夫との関係は、再婚相手にとって少しナーバスな話題かもしれません。
でも、避けて通れないのがこのテーマ。
子どもがいる限り、実父との関係はゼロにはならないんです。
たとえば、月に一度の面会交流、誕生日の連絡、学校行事の参加など。
どこまで関わってもらうか、何を共有するか、元夫への再婚報告も含めて話し合っておきましょう。
再婚相手にとっても、「事前にちゃんと共有してもらっていたかどうか」で気持ちの持ちようが変わってきます。
② 子どもを作るかどうか(実子を持つか)
再婚後に新しい命を授かるかどうか。
これはデリケートで、でもすごく大切なテーマです。
年齢や健康面だけでなく、連れ子との関係性にも影響します。
もし実子が生まれたら、連れ子はどう感じるだろう?
“本当の家族”に見える中で、自分だけが“違う”存在に思えてしまわないかな?
再婚相手が「本当の親になりたい」と思ってくれているかどうか、子どもの気持ちにどう配慮できるか。
一緒にイメージを膨らませながら、時間をかけて話し合ってほしいポイントです。
③ 養子縁組をするかどうか(苗字・戸籍の問題も含めて)
これはもう、この記事全体のテーマでもありますよね。
再婚相手との法的な親子関係をどう築くか、苗字を変えるのか、戸籍を移すのか――。
子ども本人の意思を尊重するのはもちろんのこと、手続き的な負担や心理的影響も含めて具体的にイメージしておきましょう。
また、「いずれ縁組するけど今はしない」という選択肢もありです。
曖昧にせず、いま話せる範囲で正直に話してみてください。
④ 子どもの教育方針
これは、意外とすれ違いが生まれやすいポイント。
塾に通わせるか、公立か私立か、スマホを何歳で持たせるか、宿題をどう見守るか…。
小さな違いが積み重なって、大きな衝突になることもあるからこそ、あらかじめ「大事にしたい価値観」を伝え合うことが大切です。
特に連れ子がいる場合は、「いきなり“父親として指導される”ことに戸惑う子もいる」という前提で、お互いの立ち位置を確認しておきましょう。
⑤ 再婚前の財産や負債の共有
お金の話って、なんとなく言いづらいし、愛情が冷めるようで避けたくなりますよね。
でも、だからこそ言っておいたほうがいいんです。
自分に借金があるか、持ち家があるか、親からの相続予定があるか――。
財産や負債を事前にオープンにしておくことで、トラブルの種をあらかじめ摘むことができます。
信頼は、正直さから生まれます。
⑥ 住居の場所や引越しの有無
子どもが転校するかどうか、通学や友人関係がどう変わるか。
再婚相手の通勤や生活拠点との兼ね合いも含めて、「どこに住むか」はとても重要です。
「親が幸せになるために子どもが我慢する」そんな構図にならないよう、住環境の変化は慎重に考えてあげてくださいね。
⑦ 家計の管理とお金の分担
「家賃や光熱費、どっちがどれだけ出す?」
共働きか専業主婦か、扶養に入るかどうか、生活費の分担の仕方――。
離婚理由のひとつに「お金の価値観の違い」が挙げられるくらいですから、再婚ではなおさら明確にしておく必要があります。
結婚後に「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、金銭感覚のすり合わせは重要です。
⑧ 家事や育児の分担
これは本当に大事です。
「共働きなのに家事は全部こっち」なんて、疲れが積もれば不満が爆発します。
“お手伝い”じゃなく“共同運営”として、家事や育児をどう分担するか。
役割や期待を明確にしておくことで、感謝も不満も生まれにくくなります。
⑨ 仕事への理解と応援体制
たとえば、「残業が多い仕事だけど協力してもらえる?」「パートから正社員に戻したいけど応援してくれる?」
仕事と家庭の両立は、再婚後も続く“長距離マラソン”のようなものです。
パートナーがどこまで理解し合えるか、お互いの働き方を尊重し合えるか。
それが、再婚後の幸福度を大きく左右します。
⑩ 夫婦の在り方とこれからの夢
最後に、“気持ち”の部分です。
「どんな家庭を築きたい?」「老後はどう過ごしたい?」そんな未来の話をぜひしてみてください。
現実的な話だけでなく、ちょっと理想論でもいい。
夢を語ることで、「この人とだから頑張っていける」って、お互いに思えるようになるんです。
話し合ったことは、書き留めておくと安心
10個の項目すべてを一気に話す必要はありません。
でも、大切なことはメモに残しておくのがおすすめです。
後で「そんなこと言ったっけ?」となってしまうよりも、話し合った記録を残しておくことで、自分たちの決意や想いを再確認することができます。
ちょっと照れくさいかもしれませんが、紙に書いて「わが家の約束ノート」や「婚約契約書」なんて呼んで保管しておくのも素敵ですよ。
再婚で養子縁組しないとき子供が成人の場合にはどんなメリットとデメリットがある?
子どもがすでに成人している場合、「養子縁組は必要ないのでは?」と考える人も少なくありません。
けれど、成人した子どもとの縁組にも、意外なメリットと注意すべき点があります。
成人しているからこそ、本人の意思がより重要になりますし、苗字や戸籍、相続といった現実的なテーマもより深く関わってきます。
ここでは、大人になった子どもとの養子縁組について、判断材料になる視点を丁寧に掘り下げていきます。
成人しているからといって“何もしなくていい”わけではない
「もう子どもは成人しているし、特に手続きは必要ないでしょう?」
そんなふうに思ってしまいがちですが、実は“成人だからこそ”話し合っておくべきことがあります。
たとえば、法律上は成人している子どもは親の扶養義務から外れますが、養子縁組をすれば再婚相手と“親子関係”が新たに生まれます。
その結果、相続・扶養・苗字変更など、さまざまな変化が起きる可能性があるのです。
成人した子どもを養子縁組するメリット
相続の対象になる
もっとも大きなメリットは、再婚相手(養父)の財産を相続できるようになること。
養子縁組をしていないと、法律上は他人なので、遺言がない限り相続権はありません。
縁組をすることで、実子と同じく「法定相続人」になるため、将来に備える意味では大きな安心となります。
また、養子縁組によって相続権を得るのは、実父(元夫)と再婚相手の両方に対して可能になります。
つまり、条件が整えば“二人の父親”から相続できる立場になるということです。
扶養関係が生まれることで老後の備えになる
養子縁組をすると、子どもと養父の間に「生活扶助義務」が生まれます。
これは、高齢になった再婚相手が介護や生活支援を必要としたときに、子どもが一定の責任を持つということ。
もちろん、実際に生活をともにしていない関係であれば難しい部分もありますが、「老後に一人きりではない」と思える心の支えになることもあります。
成人した子どもを養子縁組するデメリット
苗字が変わることで混乱が生じる可能性
縁組をすることで、子どもの苗字が原則として養父の苗字に変わります。
これは、たとえ成人していても、婚姻していない限り自動的に適用されるルールです。
社会人として築いてきた名刺や契約書、銀行口座やクレジットカードなど、苗字が変わることで手続きが煩雑になったり、周囲からの説明を求められたりすることもあります。
また、子どもがすでに結婚しており戸籍筆頭者である場合には、その配偶者の苗字まで変わるという、想像以上に大きな影響が出ることもあります。
扶養義務が「責任」と感じられることもある
生活扶助義務とはいえ、「義理の親の老後も見なければいけないのか」とプレッシャーに感じる子どももいます。
縁組したことで、かえって心の距離ができてしまうこともあり得ます。
そのため、成人した子どもとの養子縁組は、気持ちのすり合わせが何よりも大切なのです。
離縁には慎重を要する。解消は簡単ではない
一度縁組をしたあとで関係がこじれた場合、親子関係を解消するには「離縁」という手続きが必要になります。
離婚のように“話し合って終わり”というわけにはいかず、法的な手続きと理由の説明が求められるのです。
とくに、裁判所を通じて離縁する場合には、
- 相手からの悪意による遺棄
- 生死不明が3年以上
- 継続困難な重大な事情がある
だからこそ、軽い気持ちで縁組するのではなく、「今後何十年先まで続く関係」として慎重に考えることが求められます。
「家族」としてのつながりをどう築きたいか
最後に大切なのは、「法的に親子になる」ことが目的ではなく、「これからどんなふうに関わっていきたいか」を素直に話し合うことです。
たとえば、形式的な縁組はしなくても、「自分のお父さんみたいな存在だと思ってる」と言える関係性の方が、よほど健全であたたかい場合もあります。
逆に、「お世話になったからこそ、何かあったときはきちんと守りたい」と思っているなら、縁組を前向きに考えるのも一つの選択です。
どんな関係が自分たちにとって幸せか。
その答えを急がず、何度でも話し合いながら、じっくり見つけていけたらきっと大丈夫です。
わざと養子縁組しないという選択も“家族の愛”のかたち
再婚を機に「養子縁組をするべきかどうか」と悩むのは、決して特別なことではありません。
法律上の手続きを進めることが“本当の親子”になるための条件だと思われがちです。
でも実際には、あえて縁組をしないことで子どもの生活や心を守ろうとする家庭も少なくありません。
養子縁組をしないことで、苗字をそのままにできたり、元夫からの養育費が維持されたりと、子どもの環境を安定させるという意味でのメリットがあります。
一方で、縁組をすることで得られる絆や安心、将来の相続権などの法的な支えも確かに存在します。
だからこそ大切なのは、「どちらが正解か」ではなく、「どちらがこの子にとっていちばん幸せか」を夫婦で話し合い、そして子どもの気持ちにもしっかり耳を傾けること。
親としての覚悟や思いやりは、戸籍の上だけでは測れないものです。
あなたの家族にとって、今いちばん心地よい選択を。
焦らず、比べず、寄り添い合いながら、“我が家らしい形”を見つけていけたら、それがきっと一番あたたかい家族のかたちなのだと思います。