
七夕が近づくと、笹に飾る短冊を用意して、さあ願い事を書いてもらおう…という場面、ありますよね。
ところが、ペンを渡したとたんに「特に願い事なんてないよ」「何を書けばいいのかねぇ」と、手が止まってしまう。
気づけば、並んだ短冊はどれも「健康第一」「長生きできますように」。
それはそれですてきだけれど、なんだか毎年同じで、もう少しその人らしい一枚にしてあげたいな、と思うこと、ありませんか。(笹の前で一緒にうーんと悩む時間、地味に長く感じますよね)
先にお伝えしたいのは、願い事が思いつかないのは、ごく当たり前のことだということ。
長く生きてこられた方ほど「いまさら願うことなんて」と照れてしまったり、欲を出すのを遠慮されたりします。
だから、支え手であるあなたがやることは、上手な願い事の正解を探すことではありません。
本人の昔話や好きな食べ物、会いたい人といった「暮らしの入り口」から会話を広げて、出てきた言葉をそっと願いの形にしてあげる。
それだけで、その人らしい一枚は自然に生まれます。
この記事では、そのまま短冊の見本にできるテーマ別の例文をたっぷり用意したうえで、「思いつかない」と言われたときの声かけ、字が書きづらい方や認知症の方への寄り添い方、そして短冊の色や書き方のちょっとした工夫まで、順番にお伝えしていきます。
読み終えるころには、今年の七夕がきっと、肩の力を抜いて楽しみにできるものになっているはずです。
焦らなくて大丈夫。
完璧な願い事なんて、ひとつもいりませんから。
この記事でわかること
- 高齢の方が書きやすいテーマ別の願い事の例文集
- 「思いつかない」と言われたときの自然な声かけのコツ
- 字が書きづらい方や認知症の方への寄り添い方と代筆の仕方
- 短冊の色の意味や書き方のひと工夫で特別な一枚にする方法
高齢者の七夕の願い事は思いつかなくて当たり前
まず、いちばんお伝えしたいことから。
短冊を前にして願い事が出てこないのは、けっして本人がやる気がないわけでも、心が動いていないわけでもありません。
ここを取り違えると、つい急かしてしまったり、こちらが先回りして書いてしまったりして、せっかくの時間がもったいないことになります。
ここでは、なぜ願い事が出にくいのか、支え手はまず何をすればいいのか、そして用意した例文をどう渡せばいいのかを、順番に見ていきましょう。
願い事が出てこないのは本人のせいではない
「願い事は?」と聞かれて、すぐにスラスラ答えられる人は、実はそんなに多くありません。
とくに長い人生を歩んでこられた方は、「自分のことで願うなんて」と遠慮されたり、「もう十分生きたから」と照れ隠しをされたりすることがよくあります。
決して願いがないのではなく、いざ言葉にするとなると、ぱっと出てこないだけなんですね。
それに、ふだん「何が欲しい?」「どうしたい?」と改まって聞かれる機会は、年を重ねるほど減っていくもの。
だからこそ、急に短冊を渡されると戸惑ってしまうのも当然です。
「思いつかない=願いがない」ではないと知っておくだけで、こちらの気持ちもずいぶん楽になります。(私たちだって、急に「夢を書いて」と言われたら固まりますもんね)
大切なのは、その沈黙を「困らせてしまった」と焦らないこと。
少し待って、別の角度から話しかければ、ちゃんと言葉は出てきます。
出てこない時間も、七夕の楽しいおしゃべりの一部だと思って、のんびり構えていきましょう。
支え手がまずやるのは正解探しより会話の入り口づくり
願い事がうまく出てこないとき、つい「もっといい例はないかな」と正解を探したくなります。
でも、本当に必要なのは立派な例文よりも、本人が話しやすくなる「会話の入り口」です。
たとえば、いきなり「願い事は?」と聞くのではなく、「最近、おいしかったものってありました?」「若いころ、どんなお仕事をされてたんですか?」と、暮らしや思い出の話から入る。
すると、「そういえば、また海が見たいねぇ」「孫が大きくなるのが楽しみで」と、自然に願いのタネがこぼれてきます。
願い事は、まっすぐ聞くより、横道のおしゃべりから生まれることのほうが多いんです。
以前、デイサービスで七夕のお手伝いをしたとき、「願い事ありますか?」と聞いても首をかしげていたおばあちゃんが、「昔はよく畑をやってて」という話から急に生き生きされて、最終的に「今年も畑のトマトがたくさん実りますように」という、その方らしい一枚になったことがありました。
願いは、聞き出すものではなく、こぼれてくるものなんだと実感した出来事です。
ですから、支え手のあなたがまず用意するのは、気の利いた言葉ではなく、ゆったりと話を聞く姿勢。
それさえあれば、願い事は向こうからやってきてくれます。
例文は強制ではなく困ったとき用の引き出しとして渡す
このあと、たくさんの例文を紹介します。
ただ、ひとつだけ気をつけたいのは、例文を「これを書いてください」と渡してしまわないこと。
見本を押し付けると、どうしても全員が似たような願いになってしまい、その人らしさが消えてしまいます。
おすすめは、「もし迷ったら、こんなのもありますよ」と、選択肢としてそっと差し出す使い方です。
いくつか読み上げてみて、「あ、それいいね」と本人の表情がほぐれたものを選んでもらう。
あるいは、例文の一語だけを本人用に入れ替える。
そうすると、例文はあくまできっかけになり、最後はちゃんと本人の願いに着地します。
例文は、困ったときの「引き出し」。
たくさん持っておくほど安心ですが、開けるかどうかは本人次第。
そんな気持ちで、次の例文集を見ていってくださいね。
高齢者の願い事をテーマ別にそのまま使える例文集
ここからは、いよいよ本題の例文集です。
健康の願いももちろんすてきですが、それだけだと毎年同じになりがち。
そこで、家族や趣味、食べたいもの、感謝など、テーマごとに分けてご紹介します。
気になるテーマから読み上げてみて、本人が「いいね」とうなずいたものを選んでもらいましょう。
どれも短く区切ってあるので、そのまま短冊に書いても、一語だけ変えても使えます。
健康や体に関する願い事の例文
やっぱり多いのが、健康や体に関する願い。
定番だからこそ、ほんの少し具体的にすると、ぐっとその人らしくなります。
- 足腰が丈夫で、いつまでも自分の足で歩けますように
- 毎日ぐっすり眠れて、朝すっきり目覚められますように
- 大きな病気をせず、おだやかに過ごせますように
- 来年もこうして元気に七夕を迎えられますように
- 目も歯も元気で、好きなものを食べ続けられますように
- 転ばず、けがなく一年を過ごせますように
同じ健康の願いでも、何のために元気でいたいかを一言添えると、ぐんと印象が変わりますよ。
コツは、「元気でいたい」のあとに「〜して」を足してみること。
「元気で、孫の運動会を見に行きたい」「元気で、また旅行に行きたい」という具合です。
そうすると、本人の中にある「これがしたいから元気でいたい」という本音が見えてきて、願いがその方だけのものになります。
健康祈願はありきたりに見られがちですが、ほんのひと言で、世界にひとつの願いに早変わりするんですね。
家族や孫に関する願い事の例文
高齢の方の願いで、とても多く、そして喜ばれるのが家族のこと。
とくにお孫さんやひ孫さんの話になると、表情がやわらぐ方が多いんです。
- 孫が元気に大きくなる姿を、長く見守れますように
- 家族みんなが笑顔で、健やかに過ごせますように
- ひ孫の顔を見られる日まで、元気でいられますように
- 息子や娘が、仕事も家庭もうまくいきますように
- また家族そろって、にぎやかにごはんを食べられますように
「孫のため」「家族のため」という入り口から、結果としてご本人の「長生きしたい」という願いにもつながっていきます。
もし、お孫さんやお子さんの名前を教えてもらえたら、「○○さんが、元気にすくすく育ちますように」と、名前を入れてあげるのもおすすめです。
名前が入るだけで、短冊はぐっと特別なものになります。
飾ったあとにご家族が見たら、きっと胸があたたかくなるはず。
願いを書く時間が、そのまま家族への小さな贈り物にもなるんですね。
趣味や食べたいものや旅行に関する願い事の例文
ここがいちばん、その人らしさが光るテーマです。
昔やっていた趣味、好きな食べ物、もう一度行きたい場所。
聞いているこちらも楽しくなる願いが、たくさん出てきます。
- 畑の野菜が今年もたくさん実りますように
- 大好きな歌をまた仲間と一緒に歌えますように
- 編み物の作品を、また家族にプレゼントできますように
- 将棋や囲碁の相手が、これからも見つかりますように
- 庭の花が今年もきれいに咲きますように
- 大好きなお寿司を、また家族と食べに行けますように
- 畑でとれたスイカを、みんなで囲めますように
- もう一度、故郷の海を見に行けますように
- 温泉にゆっくり浸かって、のんびりできますように
楽しみや好きなものの話は、いちばん願いがこぼれやすい入り口。
短冊に書くかどうかは別として、まずはこのテーマで楽しくおしゃべりするのがおすすめです。
食べたいものの願いは、書いていて笑顔になれるのも良いところ。
「うなぎを腹いっぱい食べたい」なんて短冊が笹に揺れていたら、見ている人もつい頬がゆるみますよね。(願い事って、本当はこれくらい欲張りでいいんだと思います)
かしこまった願いばかりだと、書くほうも読むほうも少し疲れてしまうもの。
ひとつくらい、くすっと笑える願いがまざっていると、笹飾り全体がぐっと楽しくなります。
本人が「こんなこと書いていいの?」とためらったら、「もちろんです、楽しい願いが一番ですよ」と背中を押してあげてください。
感謝やこれからやりたいことの願い事の例文
年を重ねるほど、「ありがとう」を伝えたい、という気持ちの願いも増えていきます。
また、小さくても「これからやってみたいこと」を書くと、前を向く一枚になります。
- いつも支えてくれる家族に、ありがとうの気持ちを伝えられますように
- お世話になっている人たちが、みんな幸せでありますように
- 毎日笑って過ごせることに感謝して、おだやかな一年を
- 今年こそ、習いたかったことを少しだけ始めてみたい
- 一日一回、外の空気を吸って散歩を続けられますように
- 新しい友達と、楽しくおしゃべりできますように
- 毎日が、おだやかで穏やかな日々でありますように
「これからやりたいこと」は、どんなに小さくてもかまいません。
大きな夢でなくていい、毎日のささやかな楽しみこそ、その人を元気にする願いになります。
「これからやりたいこと」を書くのをためらう方も、いらっしゃいます。
「この年で、いまさら」と。
でも、年齢に関係なく、誰だって「ちょっとやってみたいこと」はあるものです。
「もう一度、あの歌をうたいたい」「来年は桜をもう一度見たい」。
そんな小さな一歩でいいんです。
短冊に書いた瞬間、それはただの願いから、ちょっとした目標に変わります。
書くことで前向きな気持ちが芽生えるなら、七夕はそれだけで、じゅうぶん意味のある時間になりますよね。
願い事が思いつかない方から自然に引き出すコツ
例文を読み上げても、「うーん、どれもピンとこないねぇ」と言われることはよくあります。
そんなときこそ、会話から引き出す出番です。
難しいテクニックはいりません。
ちょっとした聞き方の順番を変えるだけで、願いはぽろぽろとこぼれてきます。
ここでは、その具体的なコツを三つお伝えします。
昔話や好きなものを聞くと願いはあふれてくる
いちばん効くのが、過去の楽しかった話を聞くこと。
「若いころ、どんなお仕事を?」「育った町はどんなところでした?」「昔よく食べたごちそうは?」…こうした質問は、ほとんどの方が答えやすく、しかも話しているうちに気持ちがほぐれていきます。
そして、思い出話の中には、必ず願いのタネが隠れています。
「昔は毎年、家族で海に行ってねぇ」と聞けば、「また海を見に行けますように」へ。
「畑仕事が好きでね」と聞けば、「今年も野菜がよく実りますように」へ。
過去の楽しい記憶は、そのまま未来の願いに変換できるんです。
本人が話した言葉をそのまま使うのが、いちばん自然で、その人らしい一枚になります。
どんな質問から始めればいいか迷ったら、こんな問いかけが入り口になります。
- 若いころ、どんなお仕事をされていたんですか
- 育った町は、どんなところでしたか
- 昔よく食べた、ごちそうって何でしたか
- お休みの日は、何をして過ごしていましたか
- いちばん楽しかった旅行の思い出はありますか
ひとつ聞いて話が広がったら、無理に願いへ着地させようとせず、しばらくその思い出話を一緒に楽しんでみてください。
気持ちがほぐれたころに、「じゃあ、それを短冊に書いてみましょうか」と切り出すと、すっと願いが決まることが多いんです。
そのまま聞かずに暮らしの中の楽しみから広げる
「願い事は?」とまっすぐ聞くと身構えてしまう方には、もっと身近なところから入りましょう。
「最近、楽しみにしていることってありますか?」「明日のおやつ、何だと思います?」くらいの、肩の力が抜けた話題で十分です。
日々の小さな楽しみが見えてくると、そこから願いへとつなげられます。
「お風呂が好きでねぇ」という話なら、「温泉にゆっくり浸かれますように」。
「テレビの相撲が楽しみで」という話なら、「好きな力士が今年も活躍しますように」。
こんなふうに、今ある小さな楽しみを、ちょっと先の願いに伸ばしてあげるイメージです。(願い事って、案外おやつの話から生まれたりするんですよね)
ご家族が手伝う場合も同じで、改まって聞くより、いつもの世間話の延長で十分。
むしろ、ご家族だからこそ知っている「お父さんはあの店のうなぎが好きだったよね」といった一言が、最高のヒントになります。
急かさない否定しないが何よりの土台になる
どんなにいい声かけをしても、土台がぐらついていては願いは出てきません。
その土台が、「急かさない」「否定しない」という二つです。
考えている時間に、つい「どうですか?」「決まりました?」と重ねてしまうと、本人は焦って口を閉じてしまいます。
沈黙が続いても、にこにこ待つ。
これが何より大切です。
そして、たとえ「お金が欲しい」「もう死んでもいい」といった言葉が出ても、まずは否定せず、いったん受け止めること。
「そうですよね」と一度うなずいてから、「じゃあ、そのお金で何がしたいですか?」と、やわらかく次へつなげていきます。
否定されない安心感があると、人は自然と本音を出せるようになります。
上手に引き出そうとするより、安心して話せる空気をつくること。
それが、いちばんの引き出し上手への近道です。
字が書きづらい方や認知症の方への寄り添い方
ひと口に高齢の方といっても、状態はさまざまです。
ご自分でしっかり書ける方もいれば、手がふるえて字が書きづらい方、認知症があって会話のペースがゆっくりな方もいらっしゃいます。
ここで大切なのは、誰ひとり「書けないまま」にしないこと。
状態に合わせた寄り添い方を知っておけば、どんな方も安心して七夕に参加できます。
代筆は本人の言葉をそのまま残すのがコツ
手が動かしづらくて字が書けない方には、代筆でお手伝いしましょう。
このとき大事なのは、こちらが言葉をきれいに整えすぎないこと。
本人が「孫に会いたいなぁ」と言ったら、そのまま「孫に会えますように」と書く。
立派な言い回しに直す必要はありません。
本人の口から出た言葉を、できるだけそのまま短冊に残すのが、いちばん心のこもった一枚になります。
書く前に「「孫に会えますように」でいいですか?」と一度確認すると、本人も「そうそう」と安心されます。
代筆は、ただ文字を書く作業ではなく、その人の気持ちを一緒に形にする時間。
ゆっくり、本人のペースに合わせて進めましょう。
もし、少しでもご自分で書ける方なら、名前の一文字だけ、あるいは最後の丸だけでも本人に書いてもらうと、「自分で書いた一枚」という満足感が残ります。
全部を代わりに書いてしまうより、できるところだけ一緒に。
「手伝う」と「奪う」は紙一重なので、どこまで手を添えるかは、本人の様子を見ながら決めていきましょう。
認知症の方には思い出せる話題からゆっくり広げる
認知症のある方の場合、最近のことは思い出しにくくても、若いころの記憶はよく覚えていらっしゃることが多いものです。
ですから、「昨日のこと」より「昔のこと」から話しかけるのがおすすめ。
「お子さんは何人いらっしゃるんですか?」「お料理は得意でした?」といった、昔の暮らしにまつわる話題なら、生き生きと答えてくださることがあります。
会話のペースは、本人に合わせてゆっくりと。
こちらの聞きたいことを急がず、本人が話したいことを受け止める姿勢が基本です。
否定したり、間違いを正したりせず、出てきた言葉をそのまま願いにしていきます。
認知症の方への声かけは、その日の体調や気分によっても変わるので、「今日は乗り気じゃないな」と感じたら、無理に書いてもらわず、笹飾りを一緒に眺めるだけでも、立派な七夕の参加です。
それから、写真や昔の道具を見せながら話すのも、とても効果的です。
古い七夕飾りの写真、昔の暮らしの道具、季節の野菜。
目に見えるものがあると、記憶の引き出しが開きやすくなります。
「これ、懐かしいでしょう?」のひと声から、思いがけず昔の話があふれ出てくることも。
短冊を書くことそのものより、その会話の時間こそが、本人にとっての七夕の楽しみになっていきます。
書けても書けなくても、その時間を一緒に過ごせたなら、それで大成功なんです。
かなわない願いや重い願いが出たときの受け止め方
ときには、「亡くなった主人にもう一度会いたい」「早くお迎えが来てほしい」といった、かなわない願いや、聞いていて少し胸が締めつけられるような言葉が出ることもあります。
そんなとき、無理に明るく流したり、「そんなこと言わないで」と否定したりするのは避けたいところ。
こういう言葉は、その方が長い人生で抱えてきた、大切な気持ちのあらわれです。
だからまず、「そうなんですね」と、その気持ちをまるごと受け止める。
それだけで十分です。
そのうえで、「ご主人はどんな方だったんですか?」と思い出をうかがうと、つらい願いが、いつのまにかあたたかい思い出話に変わっていくこともあります。
短冊には、無理にきれいな願いを書こうとせず、本人が落ち着く形にすればいいんです。(こういう瞬間こそ、支え手の腕の見せどころですが、肩に力を入れすぎなくて大丈夫ですからね)
正解を出そうとしなくていい。
ただ、その気持ちのそばにいる。
それが、いちばんの寄り添い方です。
短冊の色や書き方をひと工夫して特別な一枚にする
願い事が決まったら、最後はちょっとした仕上げの工夫です。
短冊の色を選んだり、書き方を整えたりするだけで、同じ願いでも、ぐっと特別な一枚になります。
難しいことは何もありません。
知っていると、ちょっと話のタネにもなる豆知識として、楽しんでみてください。
五色の短冊の意味をやさしい目安として伝える
七夕の短冊は、もともと青(緑)・赤・黄・白・紫(黒)の五色が基本とされています。
これは中国の古い考え方に由来していて、それぞれの色に意味があるとされてきました。
ざっくりした目安は、こんな感じです。
| 色 | 込められた意味の目安 |
|---|---|
| 青(緑) | 成長や、新しく何かを始めたい願い |
| 赤 | 家族や周りの人への感謝の気持ち |
| 黄 | 人とのご縁や、人間関係への願い |
| 白 | 決めたことを守る、規律や約束への願い |
| 紫(黒) | 学びや、趣味の上達など知恵に関する願い |
とはいえ、これはあくまで諸説あるうちの一つの目安。
今は色にこだわらず、好きな色を選んでいいとされています。
「家族へのありがとうだから赤にしましょうか」「お花が好きだから緑がいいですね」と、本人の好みや願いの内容に合わせて選ぶと、それだけで会話がはずみます。
色のうんちくは、楽しむための話のタネくらいに考えておきましょう。
「昔の七夕では、色にこんな意味があったんですって」とお伝えすると、「へぇ、知らなかった」と興味を持ってくださる方も多いんです。
意味どおりに選んでも、好きな色で選んでも、どちらも正解。
選ぶ過程のおしゃべりそのものが、七夕の楽しい時間になります。
何色か用意しておいて、「どの色がお好きですか?」と一枚選んでもらうところから始めると、それだけで自然に会話が生まれますよ。
大きな字で短く書くと高齢の方も書きやすい
高齢の方が短冊を書くときは、書きやすさへの配慮もうれしいポイントです。
短冊は少し大きめのものを用意し、太めで持ちやすいペンを添えると、手がふるえやすい方でも書きやすくなります。
文字は小さくびっしりよりも、大きな字で、短くまっすぐ。
これがいちばん書きやすく、飾ったときにも映えます。
願い事の文章も、長くする必要はまったくありません。
「家族が元気で」だけでも、立派な願いです。
むしろ短いほうが、笹に飾ったときに遠くからでも読めて、本人もうれしそうに眺められます。
書く場所も、テーブルの高さや車いすの位置に合わせて整えてあげると、ぐっと書きやすくなりますよ。
手元が見えにくい方には、明るい場所を選び、短冊の下に下敷きを敷いてあげるだけでも書きやすさが変わります。
それでも難しいときは、無理をせず代筆に切り替えて大丈夫。
大事なのは、きれいに書けたかどうかではなく、その方の願いが一枚の短冊になって笹に揺れること。
少しくらい字がふるえていても、それはその方が一生懸命に書いた証で、かえって味わいになります。
「上手に書けましたね」のひと言を、ぜひ添えてあげてください。
短冊や笹飾りを写真に残すときの個人情報の配慮
最後に、ひとつだけ気をつけたいこと。
できあがった短冊や笹飾りを写真に撮って、施設のブログやSNSにのせる場面もあると思います。
とても素敵なことですが、そのときは個人情報への配慮を忘れずに。
短冊には、本人のお名前が書かれていることもありますし、背景に他の利用者の方の顔が写り込むこともあります。
写真をのせる前に、名前や顔が写っていないか、本人やご家族の了承があるかを確認すること。
これは、楽しい思い出を安心して残すための、大切なひと手間です。
施設なら、撮影や掲載のルールを事前に決めておくと安心ですね。
ちょっとした気配りで、七夕の思い出が、誰にとっても気持ちのいいものになります。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 高齢の方が願い事を思いつかないのは当たり前で、本人のせいではない
- 支え手がやるのは正解探しではなく、会話の入り口をつくること
- 例文は強制せず、困ったとき用の選択肢としてそっと渡す
- 願い事は健康だけでなく、家族・趣味・食べたいもの・感謝などテーマを分けると選びやすい
- 昔話や好きなものを聞くと、思い出の中から願いのタネがこぼれてくる
- 「願い事は?」と直接聞かず、暮らしの楽しみから広げると出やすい
- 急かさない、否定しないという土台が、何よりの引き出し上手への近道
- 字が書きづらい方には、本人の言葉をそのまま残す代筆で寄り添う
- 認知症の方には昔の話から、かなわない願いはまず受け止めることが大切
- 短冊の色は好きな色でよく、大きな字で短く書き、写真は個人情報に配慮する
でも、ここまで読んでいただいて分かるとおり、難しいことは何もありません。
やることは、ちょっとおしゃべりして、出てきた言葉をそっと短冊に乗せてあげるだけ。
立派な願いも、気の利いた言葉も、ひとつもいらないんです。
短冊を前にして、昔の話に花が咲いたり、ふと笑顔がこぼれたり。
その時間そのものが、もう七夕のいちばんのごちそうなのかもしれません。
今年は、ぜひ肩の力を抜いて、その人らしい一言が笹に揺れる瞬間を、一緒に楽しんでみてくださいね。
そんな七夕になったら、きっとあなた自身も、あたたかい気持ちになれるはずです。
